markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

ビンテージトランスの再生

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奥がビンテージのトランス。手前がその金具を再活用した再生出力トランス。

あるユーザーより、60年代のChamp用の出力トランスが断線したので、外観のイメージを損なわず、さらに製造方法も当時のままで再生して欲しいとの要望がありました。

現品を送っていただき、調査すると、蝋仕上げ (wax 含浸)で、細線で0.025mm厚のコンデンサペーパーの絶縁紙が一層づつ丁寧に巻かれていた。型式はシングルなのでコアはブロック積みでギャップがある。

仕様:3W, 1次側8KΩ、2次側8Ω、周波数150kHz,磁束密度を6kGで再設計し、1次側は細線を整列に何層も巻き、断線防止のためコイル内部でリード線に結線し、2次側は線径がやや太いのでコイル内部で折り曲げそのまま引き出す。全く当時のままの工法で手間を惜しまず制作。

昨今は需要が少ないせいか0.08mm厚のクラフト紙でさえ、最小オーダー単位が100kg以上との事。ましてや0.025mmなんて手に入らない。しかし以前、同業者が会社をたたむ際、希少価値のあるこれを譲り受けた。

父親が当時(グループサウンドが流行する前より)ギターマイクのコイルをテスコから受注していた頃、セルロイドの巻芯に、0.04φ程度の細線をこの0.025mmのコンデンサペーパで絶縁し、最後にこの絶縁紙をアラビア糊で固定する作業を指導していたのを記憶していた。

当時の絶縁材は現在のような絶縁性の高いポリエステルフィルムは無く、薄い紙が主流であった。もちろんトランスの絶縁紙も同様である。

フィルムは絶縁階級もE種120℃と高いが、このクラフト紙は絶縁階級も低く(Y種90℃耐熱)でワニス処理によりA種105℃となる。しかし、フィルムと比べ紙は静電容量が低く層間において干渉せず、出力トランスにおいては「音」が良くなると考えられる。紙よりフィルムは静電気が発生しやすいからです。

さらに、このトランスはワックス処理をしているため、ワニスで固めたトランスより柔らかく、音声信号が入るとちょうどコンプレッサーのような枠割をして、耳に心地よい音が残る。

したがって、ビンテージのアンプの音はよかったと言う、実際生の音を聞いていた人たちが言う理由もわからないわけではない。