最近、「トランスの修理」という検索で一番上位に名を連ねるようになった。修理依頼を受けても、そのほとんどが仕様が不明である。そして故障の主な原因は絶縁不良等による断線である。
仕様がわからないため、トランスを解体調査をしなければならない。通常は抵抗値の測定や通電テストの後、乾燥機で製品を暖め鉄芯(コア・ケイ素鋼板)を外し、コイルを分解しながら線径や巻数、絶縁状況を確認する。
しかしこの写真のトランスは溶接で一体化したコアのため、友人の板金屋さんでコアを切断して外す事とした。時間と費用がかかるのだが、お客さんの喜ぶ声を聞くとつい請け負ってしまう。
本業のトランスはリピート品や量産品のため商売になる。しかしこのように再販されていない、そして2度と注文の来ないトランスを復元するのはビジネスにならない。
戦後間もなくは入手が困難だったり、高かったりするためモーターの巻き直しの修理依頼があったようだ。多分トランスもあったのだろう。しかし今は鋳掛屋(鍋の穴のあいた底を直す商売)など時代錯誤であろう。
ロータリークラブでは職業奉仕というのがあるが、人間社会で職業を通じて社会に貢献する事は、その存在理由が明確になる。問題はその仕事が採算性あって、継続できるかである。知恵を出して成り立つ仕組みを作らなければならない。
大げさに言えば、このトランス復元は私たちの業界の責任であり、誰かがやらなければならないと思う。