markdadaoの日記

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被災地へ短納期でトランス再生

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9月9日の夜半,3.5mの波の高さに耐える堤防が10mの高波により決壊し、臨海地帯が水没被害にあった。ここは横浜市金沢区にある工業団地である。

「一刻も早く工場を再開しないと仕事が無くなる」と、そこの社長の切実さが伝わる。ロータリークラブの経験により、職業奉仕活動として本業のトランスの超短期の納品を約束。ここのプラントはアメリカ製で仕様が不明、何度となく電話やメールで確認をとったが、先方は被災の後処理で忙しく、その都度仕様内容が変わる。本来は相手先まで出向く事はないのだが、今回はお客様にとって緊急事態であり、現場を見るのが一番早いと、電車を乗り継ぎ3時間かけてたどり着いた。

当時、東日本大震災のボランティアで現地に入った際、あたりの住居には人の頭以上の高さに海水ラインがあった。被災されたこの工場も1.5mの海水ラインの跡があり、トランスは重いので床下近くに設置され、全てが水没しており海水による絶縁不良の恐れがあった(上記写真参照)。現場確認で幸い当方の設計したトランスサイズが既存のケースに入る事がわかる。設置配線は出入りの電気工事屋さんがやってくれる事がわかる。

トランスは仕様が確定したら設計(コアサイズや巻数や線径、絶縁や端末処理方法)を行う。その設計にもとづいて材料を手配。材料が入荷して巻線を始める。巻線が終了して端末処理(リード線や端子取付)を行う。そしてコアを挿入し金具で固定。中間検査を行い、不具合がなければ絶縁ワニスを浸漬し、乾燥炉で固化させる。通常1ヶ月から材料調達に時間がかかれば完成するのに2ヶ月はかかる。それを2週間以内で対応することになった。

弊社のホームページを見てトランスの修理依頼をされたそうだ。うちも6年前工場が被災し、多くの人たちの援助により今日がある。そして、半世紀以上トランスで食わしていただいている。ここの社長の短納期の懇願に応えない訳に行かない。

設計してから8日目の昨日、お客様へ納品が出来た。

下記の写真は高波の爪痕を残す上部が折れた松。仮止めしている白い土嚢。

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