markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

御用聞き販売

最近、都心でも買い物に出かけられないお年寄りが多く、コンビニやスーパーマーケットによる宅配便が流行っているとのこと。
郊外型大型ショッピングセンターなどの影響で、街中の生鮮食品の商店が店じまいをするとことが多くなり、老人達の近場の買い物が出来なくなっているとのこと。そこで1回5,000円以上の購買者は運賃をタダにする宅配便が活躍している。

昔は御用聞きが台所に来て、そこの主婦が「今日は○○と××を持ってきてね」と言うと、御用聞きは耳にはさんだ鉛筆をなめなめ、チラシの裏をB6サイズぐらいにまとめたメモ用紙に書き込んでいた。たいていは夕食の準備前にはその頼んだ品が届いていた。
豆腐屋なども真鍮の少しへっ込んだラッパを吹きながら、自転車の後ろにくくりつけた木製の四角い桶に水を浸して、その中に大型の豆腐を浮かべてやってきた。「豆腐○丁と揚げもの×枚」と言うと、まな板に四角な包丁で切り取り、持ってきた小鉢に水と一緒に豆腐を入れてくれ、つまみのついた引き出しから揚げ物を出す。
そのうち3輪トラックの荷台に満載した八百屋等がやってきて、いつもの路地に車をとめ、拡声器から音楽を流し、周囲から奥さんやお手伝いさんがぞろぞろ集まり、しばらくの間商売をしていた。客足が遠のくと、周囲の張りだした野菜を載せた板を上げ、音楽を止め、また巡回販売に移動する。
また「竹や~竿竹」と言って最初はリヤカーで、そのうち三輪車で売りに来る。これは物干しの竹棒の販売で、あんなものを買いに行くのは大変なので、それなりに便利であったろう。竹棹は腐って折れたり、布団を干すと重くて折れることがあったのかもしれない。
たまに鋳掛屋(いかけや)というのも来て、穴のあいた鍋等を治して重宝がられていた。各家々には富山の薬売りが良くやってきて、うちに来る薬屋はがっしりしたなかなかの好青年であったことを思い出す。よく紙風船などをくれて、ふうふうと空気を入れてはポーンポーンと手のひらでついて遊んだ。半透明の油紙の様なもの(多分薬を三角形にたたんで入れてあったものと同じ材質)だったので、しばらくすると空気を入れるところが破れた。牛乳屋はしっかりした黒い自転車で、ゆすられてガシャガシャ音をだしながらやってきた。その牛乳屋がある日、牛乳が入った瓶を落としたので、「もったいないと」言い、底にまだあった牛乳を飲んだ。母が「良くガラスの破片を飲まないね」と感心していた。
これは昭和30年代の、私が住んでいた新宿の住宅街での風景である。
もしかすると、これから商店によるネット端末を活用した宅配が流行り、昔の良き時代が再現されるかもしれない。