markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

出番が終わった

生きた経営を教えてくれたお得意先がある。父親が亡くなった19歳の私に、購買部の担当者が親身に相談に乗ってくれたり、手形の割引がわからなかったので、経理部の担当が手形を現金化してもらったりした。
そのうち、購買部長が経営者の基礎的な考え方を教えてくれたり、外注技術課長が生産技術の指導をしてくれたりした。次第にその客先に行くのが楽しくなり、一緒に旅行をしたりテニスをしたりして友人が増えていった。

QCによる問題解析や打ち合わせの仕方、議事録の残し方、材料の調達の仕方、原価計算の仕方、決算書の読み方など経営者としての教育を様々な人を通じて受けることが出来た。当時は周囲の人は全て年上で、弟のように息子のように可愛がってもらった。
その客先がある日、東京から私達がいる群馬に引っ越してきた。その頃になると、こちらも取引先に慣れてきたのと同時に、当時の担当者たちが会社の役員に抜擢されるようになってきた。そして今度は一部上場企業の経営陣と、お付き合いの仕方を教わるようになってきた。
社内の政治バランスや派閥、そして野望などを知ることになる。しかしそういう時期も、年月と共に企業の新陳代謝が行われ、子会社への天下りや役員の定年制に基づき退社してゆく。そして自分の知り合いが減ってゆき、訪問の回数が減ってゆく。

今日、技術打ち合わせがあり息子と久しぶりで訪問。若い人が多く、知り合いが少ない。構内を勝手に歩くのだが、周りから白い目で見られる。基本的には規定された帽子を被り、社内の案内と共に工場へ入るルールろなっているのだが、昔はあちらこちらに知人がおり、手で挨拶しながら中に入って行ったものだが。まるで知らない工場へ来たような感覚に襲われた。

その分息子が、若い担当者たちと談笑するようになってきた。この会社の自分の出番は終わったようだ。もっと新しい世界に飛び込もうという気になってきた。