「時間が無いんだから・・」と言われ、私は気を引き締めた。20数年前、うちの事務所で楠井先生に叱責された。
先生は末期がんをおして、毎月の経営指導に来られていた。そして翌日は群馬県と長野県の県境にあるコスモス街道へ写真を撮りに行くと言う。
その後しばらくして東京慈恵医大の付属病院へ先生をお見舞いに行った。点滴スタンドを転がしながらやってきた先生のお姿に絶句した。
私が20代で2回の不渡りを受けた。初めてのことで、主力の取引先のため私は気が動転をしており、先生は朝早く車で駆けつけてくれた。2回目の時も相手が主力取引先であり、しかも1回目から2年しか経っていなかった。会社存続のための対策案を検討するため、東京の先生の自宅を訪れた。夜遅くまで御相談させていただき、その晩は先生のお宅に泊めさせていただいた。
どの顧問先にも自分のことのように、親身に応対されておったようだ。そのためか先生のストレスが身体をむしばみ、気丈に癌と戦っはていたが、40代の若さで逝った。
葬儀の際、先生が撮られたコスモスの写真があった。そして今年もたくさんのコスモスが花を咲かせている。