客から注文を聞き、ネタを用意し、シャリを握り、サビをつけ、ネタを乗せ、お客の目の前へさっと出す。時折、酔客の相手をしながらも、手は止めない。ネタの仕込みは目利きによる。生だから売れなければ損になる。これが一般的なお寿司屋さんでしょう。
うちでは、ギターアンプ用に使われるトランスは、ほとんどメールで注文をいただく。そしてほとんどが個人客のため、注文は1台が多い。
- メールで注文を受ける。
- 設計し、製作仕様書を作成する。
- 巻線をする。
- 端末処理をする(リード線やラグ端子)。
- コアを挿入し金具を取り付ける。
- 検査をする。
- ワニス処理・乾燥をする。
- 出荷準備をする。
全てカスタメードのため、材料は用意しておかなければならない。銅線は2つの材質と太さがそれぞれあり、コアも2材質とそれぞれ各サイズ、リード線は線径とそれぞれ各色、ラグ端子は各サイズとピッチがそれぞれ、締め金具は各サイズの取り付け足やカバーをそれぞれの種類で、ボルト類は太さと長さをそれぞれ、ワニスとその他に半田や剥離剤、チューブや絶縁材など。全ての材料の総数は千を超す。これらの材料を用意して、はじめて注文の1台を生産することができる。
お寿司屋さんと同じように注文を受け、各材料を仕込み作るわけであるから一見似ている。しかし寿司屋さんのネタの何十倍も材料在庫が必要である。本来注文が入ったら、材料屋さんに1台分の材料を売ってもらえればいいのだが、1台分を要求すると100台分以上の材料が送られてくることもある。買う側を神様と呼ぶが、私たちの業界では神様は材料屋さんであり、1台のトランスを注文するお客様である。
従ってこの在庫を減らしても、注文に応じることができるようにしなければならない。従って送料がかかっても、少量納品ができる材料屋さんを見つける必要がある。マスプロダクツは中国やそのた発展途上国の世界最適値に移行し、日本では多品種少量対応で付加価値の取れる業態に変化対応できるようにならないと未来は覚束ないと考える。