A君は地域における構造設計の第一人者として多忙であり、地元国際交流協会の会長もつとめている。私に取っては青年会議所時代からの長い友人で、彼との知的会話はいつも楽しみにしている。今週の彼の卓話(テーブルスピーチ)は脱線をしてもそこにも話の深さを感じる。
一昨年富岡市は景観条例を作り、条件に適合した場合75%の補助金がおりる。このように富岡市は旧富岡製糸場を核とした町づくりを行っている。地元の盛り上がりがないと、イコモス(国際記念物遺跡会議)も世界遺産リストへの認定もしづらいのではないか?
1970年に金沢市が景観条例を施行し、1975年文化財保護法が法制化された。これらは地域の独自性、活性化、資源の保全を目的としている。その建造物として日本の住宅立て替え平均年数が27〜28年であるのに、イギリスは140年、アメリカは105年、ドイツ・フランスでも80〜90年であり、この期間が長くなる事で住宅ローンの負担も軽減される。
外国人は日本を訪問し「日本は世界で2番目に良い国だ」と言う。1番目は自国である。ヨーロッパ人は自分の住んでいる町を誇りに思っている。100点満点で点数を聞くと150点というが、日本人は自国を50点という。自分の住む地域を誇りに持つ愛国心の差ではないか。もっとも愛国心が強すぎると仮想敵国を作り混乱を起こす。
時代はスクラップ&ビルドからストック・イノベーションに変わってきた。「古い物を大事にする」と言われるが、内容は選別すべきである。国の指針を決める人たちは中高年の男性が主体であり、彼らが好む古き良き物とはモノトーンである。しかし古き物は侘び寂びがあると言うが、実際はカラフルで派手である。寺社仏閣は本来は派手であったのだが、永年の色落ちをそのままにしているので暗いと言うイメージがある。アジアの仏閣はカラフルであり、日本はそのままである。また川越市の町並みの色合いはモノトーンであるが、形は派手である。持論として「嬉しい町にしたい」嬉しいと言う文字の通り、女性が喜ぶ町と解する。
最近は寺社仏閣の保全から、町並みの保全にシフトしている。それは主役は市民であると言う考えに変わりつつあるからだ。そしてその町並みは映画で言えば「背景」であり、市役所などがシンボルの位置づけとなる。これは西欧における町並みと、そこに起立する教会などが異様であり際立っている事で理解できる。人はなんで動くか?一つは物の考え方で動く。次に経済的要因で動く。そして懲罰で動く。近代の人間は物の考えで動き、決して体罰などの懲罰ではない。
そして、富岡の再認識。「富岡らしさ」とは何だろう。歴史的には「製糸場の経済で人が集まり、それが明治から昭和まで稼働してきた。そのメインステージが長かったので、いろいろな事が混在していると考えられる。従って個々の価値観を尊重することが大事だ。世界の中の富岡をとらえた時、一つに「多胡碑」が考えられる。当時の帝の命を受け、今でいう外務大臣など3トップが認めた地域であり、渡来人の居住地であった。
地域のアイデンティティとして、「富岡製糸場のある町で○○をやっている」と言える事だ。
ロータリーについて。ロータリーは自分が遊んでもらえる場所。居場所と出番がうまく行けば活性化すると考える。