markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

トランス業界


トランスは電気とともに生まれたと聞いている。そのトランスの命は絶縁にあると言っても過言ではない。その通電をしながらも絶縁性を確保する生産技術は、熟練した人の手によるものが大である。
それらの機能をもったトランスは銅と鉄が主な材料である。銅線は世界の銅相場に左右され、現在は歴史上最高値圏にいる。鉄である珪素鋼板も値が下がる事がなかった。鉄や銅は新日本製鉄日立製作所などの大手企業からの供給によるもので、需要先のほとんどが中小企業である。従って、単価に対するイニシアティブはいつの時代も大手企業にあった。このような状況下で材料比率は5割以上と、毎年付加価値が減少している。
以前、日本のトランスメーカーの存続を賭けた、トランスメーカーのポータルサイトを開催した。目的の一つは材料比率の高い業種であるため、その負担を軽減したくネット上にバーチャル倉庫を設置し、各トランスメーカーの在庫を共有化し、それぞれがキャッシュオンデリバリーで融通する事とした。しかし、その目的に本気で賛同する企業が60社ほどしかなかく頓挫した。
労働集約型のトランス業界も、収益力を求め10数年前より海外生産にシフトしていた。推定ではあるが、バブル時期ですら日本の小型トランス生産高は1兆円もなかったが、現在は恐らくその8割程度減少したであろう。従って、業界は後継者がいない企業や資金の余力ある企業は早々と市場から撤退していった。
中国国内でも低周波用のトランスを製造する企業は、製造技術をあまり要せず、数量のある高周波トランスへ移行している。驚く事に弊社のような、巻線製造技術や組み立て仕上げ技術を擁する企業は中国ですら減少している。
10年来お付き合いをしている中国企業など、最近は稀有な存在となってきている。もし弊社の生産技術を支えている社員が退社すると、この製造技術も消滅しかねない。
電気とともに生まれたトランスの行く末を心配しているが、現在の情報ツールであるインターネットを活用し、トランス需要を掘り起こしたい。