隈研吾氏が富岡市役所の設計監修された縁で、本日富岡市役所オープニングイベントの一つとして講演会が開催された。会場となる市役所内会議室の収容人数100名のため、抽選とのことでネットで応募した。
聴講者の約2割程度は来賓者で埋まり、残りの席は我々一般が占めた。5年前、市民協働型の長岡市庁舎を見学し、また昨年は福岡、太宰府天満宮の参道にある木組みのスターバックスに寄り、時の人であるこの建築家の哲学というか、考え方に大変興味をもった。しかし冒頭「飛行機が遅れたのでご本人はまだ到着はしていない」とアナウンスがあり、来場するまで隈研吾事務所のお弟子さんが時間を埋めてくれた。
前回のブログによる富岡の生い立ちの中で、富岡の道路の特殊性は雁行型であり、それを新市庁舎の中庭の動線に取り入れたとのこと。また昔からの富岡は養蚕農家や富岡製糸場の「越し屋根」に特徴があり、市庁舎の建物も冷暖房及び照明のエネルギー節約のため、この越し屋根を活用した。市の周辺の山々には多種な樹木(主に広葉樹)が混在しており、これらをアルミ素材の板に貼り合わせ、建屋のルーバーとして使用したそうだ。更に、生糸を作る際不要物となる「きびそ」を活用し、壁紙として生まれ変わらせた。これらは地元の特徴を活用し、地元の新市庁舎をデザインした隈研吾氏の考え方であった。
しばらくして、隈研吾氏が到着しパワーポイントで話を始めた。
コンセプトは「均一化したハコモノの建造物から、地域の特性を生かす」とのことであり、これは世界の流れ「地域の時代」であると。
木材が腐るのは木の隙間から出入りする水が腐るからであり、木材にプラスチックを浸漬させることでノーメンテナンスとなる。そして不燃加工もできる。コンクリートは200年、木材は維持がよければ1,400年の寿命があり、木を伐採すれば温暖化になると言われていたが、木を切り出し、その後植林をしてメンテナンスすることで、二酸化炭素を森が吸収し温暖化を防止できるとのこと。
新国立競技場では日本中の木材を使用しているので、アプリを活用し各県の木がわかるようにしたいと。そのほか国内外で手がけられた建造物を紹介された。
中でも古来からの日本の木組み製造技術(釘、ボルトを使用しない)を活用とした橋や建物の建造物は圧巻であった。更に茅葺の活用もしているが、職人が減っているために苦労をされたようだ。木材を利用した建造物が多いが、地中海のマルセイユではその地域にあるガラス工場で生産されたガラスを多用した建造物を作った。
設計者の建物は似てくると言われるが、地域特性を活かしたものには独自性があり、この様なコンセプトを持つ多くの設計者が出てくると面白い。
下の写真は市庁舎の内部。