ギター用真空管アンプの出力トランスや電源トランスを製作販売しているのですが、お客様からアンプについて相談を受けることもあります。
真空管のギターアンプはオーディオアンプとは同じではなく、その製作に関しては経験とそれを裏打ちする学習研究があって、初めて良いギターアンプが作れるとアンプビルダーであり、うちの技術アドバイザーが言う。
Fender Pro Junior の修理依頼を受けた。本来ならば、配線をすべてやり直し、トランスを始めすべてのパーツを交換すれば良い音が出せるのだが、アンプを1台作る事と同じ費用となるため、今回は音が出せる状態だけにすることとした。
そして現品を送りいただき、調査修理を行ったアドバイザーの作業経緯を記す。
プリント基板上のヒーター回路のパターンが損傷しており、トランスのリード線と真空管のピンをダイレクトに結線する。同時にLEDランプとそれに伴うダイオード等を撤去する。(回路図のR3〜36. CR6とLD1の撤去)
そのヒーター回路にネオン球のパイロットランプを取り付ける。また、新たにハム防止用抵抗100Ωを2個、ヒーターリード線よりダイレクトにシャーシーへアースする。
アドバイザーの意見では、真空管アンプは基板配線よりハンドリングワイヤが良い。現在販売されているVOX, Marshall, Fender等は以前のように手作りの配線方法からプリント基板に変更し、音も構造も安っぽくなってきた。昔は、アンプの裏をひっくり返すと絵になるようなフォーミングされた配線がなされていた。現在、アメリカなどではこの様な設計思想で作るブティックメーカーの高価なアンプを、耳の肥えたプロが使っている。それを流行りとして、高額なお金を払ってアマチュアも入手し始めている。
しかし日本でも、うちのアドバイザーの作るアンプ等はリーズナブルな価格で同等の音を出している。残念な事に流行りやファッション的なブランドに目が向き、本物の音を追求するユーザーが少ないのが現状です。
もっとも当時の本物の音を出すアンプの所有者は少なく、いても音を出さないコレクターであることが多い。
下記写真は真空管のピンから直接配線しているリード線