markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

論点(上毛新聞オピニオン1000より)

今朝の上毛新聞の論点で「ものづくり立県の危機」と言うテーマで、元大学教授、コンサルティングで大学非常勤講師、私の3名が報道部の宮村さんと対談形式で企画された紙面が掲載された。以下は私の原稿です。

中国の製造業者と付き合って約30年になる。初期の取引では半分が不良品だったが、今では不良率は1%以下になった。僕らも品質の基準を伝えたし、現地も日本の基準をクリアできれば世界に売れると考え、努力してきた。
 中国人は手先も器用で集中力もあるから、いい製造機械があればいいものを作れる。最近はどんどん設備がよくなっている。
 激しい新興国の追い上げの中で、日本の製造業衰退の原因の一つに国が将来性のない過去の産業を支援し、延命させていることが挙げられる。支援を受けた繊維業が大きく衰退し、何の支援も受けないユニクロが大きく成長したのがいい例だ。無理に支援を受ければ、本来の活路を見失う。
 規制も日本の製造業を苦しめている。最低賃金を撤廃し、日本語が出来る外国移民を受け入れれば、日本の製造業は息を吹き返す。付加価値のある仕事なら給料を多く払えるが、そんなに付加価値の高いものばかりではない。だから、海外に仕事が流出する。うちの工場では海外の実習生や日系人を受け入れ、工場を東南アジア化して競争力を高めている。
 ただ、コスト競争だけでは未来はない。弊社は56年前から熟練技術者の技術を生かすため、ギターアンプ部品の高級トランス(変圧器)の製造を始めた。ベテランが手仕事で作ることで、いい音が出せるため、国内の一流アーティストに使われ、海外でも高評価を得ている。
 熟練した技術が必要なこういう仕事なら死ぬまで働き続けられる。1個何百円の製品は1日何百個も作らなければならないが、1個数万円の製品なら1日1個でもいい。海外製の安いトランスが出回り、危機感を持ったからこそ、アイデアが出た。公的支援がなかったからこそだ。
 ただ日本だけでは市場が小さいので、世界で売ることを考えている。いいものがあれば零細企業でもITを使って海外に発信し、ビジネスができる。語学力とIT活用力は、国際ビジネスでの「識字率」のような位置付けになるだろう。
 大手製造業に足りないのはスピードと失敗を恐れぬ体質だ。取引先の韓国企業は日本に日帰りで出張するなどスピードがすごいが、日本の大手はどこも稟議制でスピードがない。発想でも若手がおもしろいことを考えても、上司が止めてしまう。本田宗一郎も少年みたいだったと言われており、そういう気持ちがものづくりやビジネスの原点ではないか。
 140年前に官営富岡製糸場ができ、周辺の産業が発達した。将来世代に何かを残すためには、今はITとバイオを取り入れる以外にない。Wi-fi網が整備されたIT都市を作るなど、群馬県が他県とは異質だと言われるぐらい、思い切った取り組みが必要だ。