「お客様は神様」と言い、お客様の要望は優先的に受入、対応して自分の商売を確立するという論理がある。ニュアンスが違うが、この考えに私は「ノー」と言いたい。
本業は物作りで、お客様の理不尽な値下げや責任転嫁に対し、トータルで赤字が出ないならば我慢をして受け入れてきた。しかしそこには、人間と人間の関係が無く自分達の都合が優先されていた。たとえば大企業の購買担当者は組織人としての自分の役割を遂行するあまり、相手の心に関心をもつ余裕は少なかった。特に昭和40年代はまだ心の触れ合いはあったが、昭和60年代から平成にかけ自分を守ることに汲々となってきた。
しかし、それは年代の問題ではなく、日本の製造業の転換点がその時代にあったのではないかと考える。その企業が戦略的に儲けを出せる企業であれば、厳しさの中にもパートナーシップがある。逆に儲けを出せないじり貧の企業は、全てが利己主義で相手を慮る余裕はなくなっている。そういう企業を相手に無理して付き合わなければならない下請け企業に悲哀があった。
ユニクロは製造方法をどんどん変えてゆき、素材とデザインと製造ノウハウを供与し、低価格で教えられた通り品質を維持できる工場を求めて世界(主に中国)へ出て行った。IBMは80:20の法則通り、製造部隊を中国のLenovoに移管しソフト企業として生き返った。アップルはCPで独自のシステムを維持しながら、携帯端末をデザインと製造システムで世界のトップに躍り出た。このような対応ができる日本の企業がわずかであったことが、今の日本の工業力の結果となっていると考える。
私達中小企業はドイツのマイスター制度を日本流に改善適用したり、熟練工の技術を担保にデザインや色を洗練させ、その製品をネットで世界に発信することで、価格と品質を取り戻し、日本の基礎的工業力を回復させることが出来るのではないだろうか?