8月29日早朝のJアラートは72年ぶりの空襲警報であり、時間の経過とともにJアラートを鳴らしたのは安倍首相のパフォーマンスだとか、早朝から起こされた、電車が止まってしまった、アラートが鳴って数分では何もできない、などだんだんと主旨が変質化している。少なくとも関東以北の国民に危機管理意識を呼び戻したのは、それなりのきっかけになったのではなかろうか?
危機意識や対北朝鮮対策など関心を持ち、当然国会も北朝鮮へのクレーム以上に国家としての対策を議論すべきだろう。泥棒を追っかける警察官が「待てー」と言って立ち止まって待つ泥棒はいないし、喧嘩をふっかけられたら「やめてください」と言って「やめます」という相手もいない。かと言って、恫喝には恫喝ではヤクザの抗争となり死傷者も出る。
そこで想起するのは1983年アメリカで、中曽根康弘元首相が日本列島を「不沈空母」のような内容を発言。それは北の脅威を食い止め、太平洋には出さないという安全保障パートナーのアメリカとの地政学的な位置づけを明確に意味した。それが日本を侮れない、という抑止力となったのではないか?
しかし現在、すでに沖縄接続水域を中国軍艦が横切り、北朝鮮のICBMは北海道上空を越え太平洋へ着弾した。また、ロシアの爆撃機は領空侵犯こそないが日本を周回飛行している。
北朝鮮へ経済制裁として石油を止めれば経済が困窮し、難民が押し寄せると言う中国の建前論で、相変わらず石油供給が継続されている。ロシアも北朝鮮を孤立化し暴発させないようにとの建前で、経済支援(すでにロシア主導の経済特区)を継続し北朝鮮への侵略を画策している。
国民の過半数が集中している首都ソウルへ、国境の非武装地帯に配備されている約600門のロケット弾により「集中砲火するぞ」と韓国は脅かされている。これは推測だが、慰安婦少女像や最近話題となっている強制徴用労働者像は、北朝鮮の恐怖から国民の目をそらす手立てではないかと。選択肢として、核保有国の北朝鮮との連邦国家擁立を韓国政府は模索しているかもしれない。
アメリカは北朝鮮が核弾道ミサイル実験に成功した後に具体的な外交交渉を始め、ロシア、中国との「緩衝国家」と引き換えに、金一族と北朝鮮を容認するのではないだろうか? 要は現代では日本は不沈空母の役割もなく、せめて共産に組みしなければ良い程度にしか考えられていないのだろう。
各国家は自分たちの都合による平和を追い求める。翻って各個人でも隣人、隣家や周囲の人たちと、自分の都合による自分のための平和を追い求め、相互の利益に反すれば争う。歴史的には宗教戦争も然り、自分たちの理想とする平和を求めての争いである。
その争いを回避する人類の知恵は、国連や、個人間では隣保班などの集団による異端者の抑制である。一方「多様性」を認め合う社会を奨励している。しかし、北朝鮮を非難する国連議長声明も無視され、多様性を叫ぶアメリカでも白人至上主義が黙認されている。
このような時代、国のリーダーはもっと権謀術を勉強してほしい。孫子の兵法、韓非子やマキャベリなどの謀略学、ランチェスターの兵法、そして地政学(ゲオポリテック)など、昔から戦わずして勝つ方法がたくさん生み出されてきている。私も40年前に読んだ倉前盛通著の「悪の論理」を再読してみよう。最終章に「日本のゲオポリティック(地政学)」で中国が突然、尖閣の領有権を主張した理由も書かれている。もし尖閣列島付近の海底にいる潜水艦からミサイルが発射されれば、中国主要都市全てを攻撃されてしまう地政学上の位置であり、中国は危機感を抱いている。だから日本の海上自衛隊のミサイルが搭載されていそうな潜水艦を、経済水域だといってあの辺をうろちょろしていれば、外交交渉で「秋の党大会が終わったら、北朝鮮への石油止めてね」と言えば、今すぐにでも北は日本を警戒する。一方、韓国は孫子の兵法通り、刃物振り回している相手とは戦わず時を待つのだろうね。