4月1日から電力自由化が始まる。電力といえば「電力の鬼・松永安左エ門」を連想し、約30年前に読んだ小島直記著の松永安左エ門を題材とした「まかり通る」を本棚から出してきた。
戦前国内にあった100数社の電力会社を傘下に組み入れ、戦後は政府とGHQを説き伏せ将来の国家を考え9電力体制を築き、適正価格(大幅な値上げ)を遂行し現在までの電力会社の基礎を築いた。
松永安左エ門の波乱万丈な生涯も印象に残るが、日本の高度成長期を支えるインフラの一つである電力の基盤を、命をかけ作ったことは感銘する。驚いたことは当時のエネルギーの元となる石炭から、石油燃料そして原子力まで想定し人材を育てていたことだ。
「山師は山で果てる」と言い、昔から得意な分野で足元をさらわれるという言い伝えがある。電気を作り電気を売っている「東京電力」が、津波で非常用発電機を水没させ、原子炉冷却の送水ができなくなり、メルトダウンし最悪の原発事故を発生させた。
資金力も人材にも恵まれたマンモス企業の官僚化の悪弊がでたのか、経営陣のおごりなのか、人命への危機回避への対策を怠った責任は大きい。
約50年前(高度成長期前)と比べ停電も少なく、電圧も海外と比べ安定した電力事情ではあるが、明後日からの電力自由化は、命をかけて日本の電力基盤を作った松永安左エ門はなんて思うのだろうか?
歴史に「もし」は無いのだが、非常用電源が高台に設置され、原子炉冷却のための電力供給に支障がなければ、おそらく日本は今頃安全な原子力発電としてそれが主流となり、世界に比して低価格な電気代を提供しているだろう。電気を多く使うアルミ精錬などは、電気代に敏感である。したがって、低価格の電気料は産業界にも大きく貢献したことであろう。