以前は低域がドライブするようなギターアンプに人気があったが、最近はギターの中域が伸びて、低域をカットするようなアンプに嗜好が変わってきている。
バンド演奏の場合、ベースギターと重なるよりはギターソロで華やかに音が抜ける方がバランスが良い。またライブでもPAは意図的に低域をカットしているようである。
このような背景に、うちの出力トランスも中域特性に優れた巻線仕様で20W,50W,100Wの試作を制作している。うちの会社の技術アドバイザーであるA君がスタジオを借りて、フルに音を出して従来型と比較をしてみる事にした。そのために上記写真のようにトランスを2台セットし、切り替えスイッチで音の比較をする事とした。
スピーカーや真空管等は全て共通にして、出力トランスのみの違いを確認する。以前も話をしたように、音は記憶に残らない。従って、瞬間にスイッチを切り替えて音の比較をするのが良い。また、エレキギターのピックアップは音の拾いの良いものの方が違いが良くわかります。
従来タイプの出力トランスは低域から広域まで広い範囲で音が出せるため、バラエティーに富んだ演奏をするプレーヤーには適している。そして、出音が良いため20Wクラスでも50Wのアンプと錯覚します。
しかしロックに特化したプレーヤーは物足りないのではないかと思います。そこで中域特性を伸ばした出力トランスにより、ギター特有の音の伸びが良くなります。決定的な違いは、低域があまり出過ぎると、和音を弾いた際、またはバッキング時、低域の音が残ってしまい、きれいな和音に聞き取れない訳です。それが中域特性に優れた出力トランスでは、ちゃんと綺麗な和音を表現でき音楽になるのです。音を歪ませたときは更にわかります。もちろん単音でリードを取ると、音が粘り、エレキギターの特性を引き出してくれます。
音の比較につきあってくれたギタープレーヤーは、トランスだけで音が変わる事に驚いていました。