markdadaoの日記

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「道徳と資本」を読んで

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半田 メーカーで有名な千住金属工業の会長、東京東RCで会長、そしてガバナーを歴任された故佐藤千壽氏の小冊子を読んだ。冒頭に「この冊子はロータリーの会合の講話執筆したものだが、中心課題は人間不在の市場経済批判であり、ロータリアン以外の一般の方々にも耳を傾けていただきたい」とのこと。

以下に感じたことを抜粋する。

 

職業奉仕とは寄付や政治献金ではなく、本業運営の基本精神。第1に考えるべき基本精神は①労使関係、②売手、買手双方における取引関係、③同業者関係、④自社製品(又は取扱商品)が及ぼす社会的責任。

 

職業人が住み良い世界を作るために一役を買おう、などと務める必要はない。そんなことをするより、社員の心に灯火を点じ、希望と活力をいかにしてかき立てるか、その方策を探求するのが、常識的なより良い奉仕の道である。(ポール・ハリス)

 

 

自由競争資本主義というのは宿命的に弱肉強食で、常にコストを外部化しようという本能を持っているものなのです。そういう経営姿勢で巨大な利益をあげ、これを慈善事業に寄付しても、これはRCが唱える職業奉仕ではありません。

 

もともと仕事というのは一家の生計手段としての社会的分業ですから家業だったわけです。この家業を失えば一族路頭に迷います。だから当然信用を重んじ家業の永続を念願します。欧米人の姓がたいていのその先祖の出自を示す家業からきている。Baker(パン屋)・ MIller (粉屋)・Tailor(服屋)・ Cook(料理人)・ Fisher(漁師)・ Smith(鍛冶屋)など。

 

問題が発生するのは、所有と経営が完全に分離されていて、誰でも参加できるが誰一人無限責任を負うものが無いという、出資者の顔が見えない公開共同企業である。

 

法律的に言えば会社は出資者(株主)の所有です。しかし私(筆者)の経営理念をもってすれば会社は出資者、経営者、社員の三者共同体です。社員という人格を持った人間は誰の所有でもありません。内部留保金もこれを産み出したのは数代にわたる社員、経営者達ですから、それを今の株主が、俺のものだと言って奪い取ることは倫理的に到底承服はできません。

 

アメリカでは企業には法によって認められた利己的機能があるのみでそれ以上のものではない。だからそういう社会構造の中で富を得たものは慈善事業に富を還元するのが社会的責任である。だからRCは慈善団体化する。これに反して職業の倫理を高めることによって社会に貢献しようという職業人の団体という考え方がある。

 

金儲けゲーム論は「利益は奉仕のご褒美だ」という職業奉仕論と全く正反対です。こういう拝金思想を育てた戦後日本の家庭と社会環境ー問題の根はそこにあります。

 

所有と経営が一体の場合は、自分の金を自分のために使うことになります。当然節約と効率を考えますからこれが一番間違いの少ない道です。ただ道徳的に言うと、それだけで終わってはいけない、金は他人のためになるかどうかを考えて使え、またそれが最終的には自分のためにもなるのだ・・・・と目覚めて、ここに職業奉仕意識が生まれました。

 

「稼ぐが勝ち」を正義とする世の中になれば、とりわけ実業界の厳しい競争場裡に身を置く者の数は減って、ロータリーは独立専門職務階層が主導権を持つ社交クラブ、説法募金組織になるかもしれません。

 

バフェットの醸出金を併せるとゲイツ財団の資産は598億ドル(約6兆8千億円)にもなります。一方ロータリー財団の現有純資産は6.7億ドル(約8百億円)と全く比較になりません。財団の設立1917年から使った総額は約14億7千万ドル(約1千7百億円)です。ゲイツ財団なら毎年その基金の果実で支出してゆけます。財団をロータリー活動の目的化するところに問題がある。財団主力の活動を誇示しているだけなら、それはロータリーを矮小化するものです。ロータリーでなければ出来無い仕事の行き着くところは、結局人間形成で、具体的な活動はそこに到る手段です。

 

ロータリーとは生活の姿勢を正す仕事ではないでしょうか。だから組織として真剣に考えるべき問題は、単に職業人を対象としてではなく、広く市民啓蒙運動としての道です。

 

人類の歴史は、原始社会より現代まで宗教の無い文化など一つもありません。ところが今日、世界を支配している合理主義、世俗主義、拝金主義がやみくもに宗教を排除したため、今度は却て一神教が宿命として背負っているその異端排除性を増幅して、これを暴力化させてしまいました。

 

グーグルの創業経営陣による「株主への手紙」なるものに共感を覚えた。「会社の命運を決めるのは知識を提供して価値あるサービスを生み出す経営者や社員であって金の出し手ではない」これは来たるべき時代の企業における資本とは「金ではなく人である」という思想を先取りしたものと言える。

 

ウォーレン・バフェットは短期の利ざや稼ぎなどはしない。「もの申す株主にならないのは何故か」と聞けば「ものを言わなければならないような企業には最初から投資しない」と答えている。

 

RCの活動は、会員及び会員でない者の双方にロータリーに対する十分な尊敬の念を持たせるごときものでなければならないとされている。従っていかなるクラブも、富くじ等によって資金を集めることは、そのような行為が完全に良いことと認められていない国に於いては避けるべきである(理48-49)

 

通信情報革命の鬼子である仮想現実に溺れようとしているのが今の日本ではありませんか。要するに仮想現実を何処までも膨らませて行こうという精神構造・・・老生はそれを問題にしているのであります。凶悪犯罪の根源も仮想現実にあるのです。企業は何のためにあるのか、誰のためにあるのか、その根本的命題を忘れさせるのも、やはりこういう幻想的な金銭至上主義です。(自社株の時価総額についての意見)

 

以下に千住金属工業株式会社の経営の理念が記載されておりますので一読を!

SMIC|経営の理念