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「私の大往生」を読んで

 

私の大往生 (文春新書)

私の大往生 (文春新書)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/08/20
  • メディア: 新書
 

 

年始の挨拶電話で「めでたいのか、めでたくないのか?」と、今年99歳になる母の答えであった。長寿はめでたいに決まっているが、年が開けるたびに人は終焉に近づくのでめでたくはないのである。

昨日の大晦日は、2週間前、ある通夜で偶然隣席になり軽口を言い合った友人の、突然の訃報に言葉を失った。

正月早々でふさわしくは無いのだろうが、人生の先輩たちは何を考えているのだろうかと、週刊文春編の「私の大往生」を読んだ。

 

医師の中村仁一氏は「一年の計は棺桶にあり」と云う。それは死を視野に入れて、死の助けを得て初めて生が充実する。そして、気持は若いが身体は言う事は聞かなく身体を若返らせようとするが、「気持を身体に合わせる」事で生きることが楽になる。

 

英文学者の外山滋比古氏は「無機的なものを有機的なものにする」として「知識は雨のようなもので、ザーッと降ってくる。それを溜めるのではなく、一度自分の経験を通過させて、地下水にする。それが湧水として沸き出てくる。これが考えるということだ」との事。また、歳を取ったら、自分と全く違う生き方をしてきた人と付き合う。そして談論風発し成長に繋がると説いている。

 

作家の佐藤愛子氏は「死を恐れると云う気持ちよりも、今まで慣れ親しんだ現実、そう云うものとサヨナラしてしまうひとりぼっちになる寂しさ、悲しさ」と云う。同感である。

 

芸人の内海桂子氏は「苦労が苦労のまんまだと惨めじゃない。その苦労を漫才と言う一つの絵に描いて、その絵が良ければ芸になる」と云う。

 

大学学長の出口治明氏は「地球の生命はあと十億年で終わることが確定している。それは太陽が大きくなって地球の水分が無くなるから。地球の生命が終わる前に人間の歴史が終わる。」と云い、「人間はいつかは死ぬのだから、死に方を考えても仕方がない」とも云う。

 

映画監督の大林宣彦氏は「談志が癌になった後、『俺なりに努力して、ここまで来た。癌ごときに殺されたくねえ。何のために生き延びたんだ?大林さんなら分かるだろう?』と言って、僕を抱きしめながら泣きました」