立川市石井医院の石井良幸君より、タイムリーな話をいただきましたので、以下に記載します。
毎日暑い日が続いています。熱中症への対応が、盛んに報道されています。昨日もテレビでは熱中症のスペシャリストが、クイズ形式で問題を出してらっしゃいました。
「熱中症になった時は、A:ミネラルウォーターを飲む?B:スポーツドリンクを飲む?」このような表現内容は誤解を招きやすいと感じました。
そこで、私が講習会や日常外来患者へ話しをしている内容を皆様へお伝えします。
脱水になった際、水分だけでなく塩分も必要であることは、最近では誰もが知っていることでしょう。したがって、イオン飲料が重視されてきています。ただ、多くの方は、スポーツドリンク(以下SD)と経口補水液(以下ORS)を混同してらっしゃるように思われます。イオン飲料ということで、もう少し突っ込んでお話をしていただきたかったと思いました。
図1 「塩分喪失の程度に応じた飲料(補水)の選び方」
図1は、塩分喪失の程度での補水、「何を補水するのがよいか」を表したものです。
過度の発汗の場合にはORS,さらに重篤なものは補液の適応が表記されています。
図2 「ORSとSDの構成の違い」
ORSとSDでは、その成分構成が大きく違います。図2のようにNa(ナトリウム)は2倍以上、K(カリウム)は4倍、Cl(クロライドイオン)も3倍以上ORSの方が多い。一方、糖に関してはSDの方が2.5倍ほどORSより多い。そして、何より、Naと糖の比率が、2:1になっていることです。
図3 「ORSの利点と特徴」
補水の場合、塩分が重要なことはお判りいただいていると思いますが、糖分も大変重要です。塩分は吸収力をアップし、糖分は血漿量を保持し、吸収速度に関与します。図3にもあるように、塩分と糖分のバランスがよいと効率よく吸収されます。水分吸収力がベストになるのは、Naと糖の比が2.2:1で、浸透圧も285Osm/lを越さないようにすることが重要です。そのような意味で、ORSが緊急時には有効と考えられます。
最後に敬候補汚水療法を行うときの注意事項を列記しておきます。
- 一気に飲ませないで、ゆっくりと少しずつ。(1時間に500ml程度でよい)
- 濃度を変えない,凍らせない、薄めない、混ぜない。
- しょっぱい時は、ゼリータイプにする、ストローで飲む。
- 飲めない症例は躊躇することなく補液療法を行う。
「経口補水療法ハンドブック」 付録●日本医療企画
以上、少しは補水のことがわかっていただけましたか?ヘロヘロになった時は涼しい環境の下、比較的大きな動静脈が併走していて体表からでも触れることができる側頸部、腋窩部、鼠径部で直接冷却しつつ、ORSを時間をかけてゆっくりと飲ませましょう。
それでは、今日も暑くなりそうです。気合を入れて頑張りましょう!
令和1年8月4日朝 立川市石井医院 石井良幸