markdadaoの日記

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Fender BASSMANについて

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弊社アンプ技術顧問のBASSMANについてのあれこれ。

 

まずは、4X10BASSMANについて。これは4X10でわかるように、10インチスピーカーを4発載せたコンボ型ベースアンプを意味しています。15インチスピーカーが1発で製作を始めたフェンダーのベースアンプでしたが、1954年より10インチを4発の仕様に進化した4X10がデビューしました。これは「小さなスピーカーでも数を増やしトータルの表面積を大きくすれば、よりベース向きのサウンドが得られるはず」、という考えからでした。

1954年よりスタートした4X10のこのアンプ、回路は数年間で何度も変更されます。それらは古い順に、5D6、5E6、5E6A、5F6、5F6Aの5つのバージョンとなっています。最期の5F6Aは1959年から1960年頃のバージョンとなり、これが現在でも人気のある、’59BASSMANと呼ばれるものです。またこれらは全てキャビネットツイード張りのため、ツイードベースマンとも呼ばれ親しまれており、現在でもリイシューモデルとして発売されています。

また、これらはコンボ型で真空管方式のため高熱が発生し、キャビネット背面を塞ぐことができず、当然ながらオープンバックとなります。それ故、実際にはベースプレイヤーよりもギターリスト達に好まれるサウンドとなっているのです。

また、多くのアンプビルダーは、リイシューモデルをできるだけ本物に近いヴィンテージ仕様に作り直したいというご希望もあるようです。

  

オリジナル(ヴィンテージ)とリイシュー品との違いは多々あり、主な点を以下に記載し、改造時の参考にまとめました。

 

  •  キャビネット;形状、寸法はほぼ同じだが、材質はヴィンテージがパイン材の単板に対しリイシューは合成材が使われています。

  •  シャーシー;寸法等あまり違いはありません。 
  • パワートランス;B巻線の電圧が、リイシューは高すぎるため、これはオリジナル通りにAC325Vのトランスに交換が必要。 
  • 真空管;初段プリアンプ管は12AY7がオリジナル、リイシューは12AX7でハイゲインになっています。

  •  配線用ボード等;オリジナルは当時のフェンダー独特の黒いファイバーボードに配線用ハトメを打ち込んだもので、当然ハンドワイヤリングとなっています。リイシューはプリントサーキットボードで、CR類も全て近年の小型なものが使用され、耐圧等も極限まで小さく、バーンアウトしてしまう事故もあります。 

  • バイアス調整;これが一番の問題点で、リイシューでは出力管のバイアス調整ポットが省かれており、これは必ず装備する必要があります。
  • リイシューでは、コントロールパネル上にあるグラウンドスイッチは、全く配線されていないダミーとなっています。

 

ざっとこんな感じですが、アンプビルダーがどこまでこだわるかによりますが、もっと追求するならばキャビネットから自作するしかありません。そして、良質なパイン材を入手したり加工するための工具・治具等までそろえる必要があります。ツイード生地は現在でもキットメーカー等で容易に入手は可能です。仕上げにラッカーを塗れば、かなりヴィンテージに近づきます。

 

サーキットボードもキットメーカー等で似たものが入手可能のため、ハンドワイヤリング化自体は難しくありません。

 

ちなみに、C・R類は、例えばA/B社製のカーボンコンポジット抵抗等は、まだまだ入手は可能。ただし注意したいのは電解コンデンサで、未使用のオールドストック品は寿命があり使うことはできません。現行品の中から雰囲気の似たものをチョイスするしかないようです。

 

**オタク情報・・・・古くからの回路図も公表されていますが、実はトーン回路のフィルムコンデンサ2個組み合わせの値は実際には大きく、作られたものと違っています。後期に制作されたものは回路図通りのようですが、数は少ないと思われます。音的には回路図通りのものが良いとされています。マーシャルが詳しく知らずに回路図通りコピーしてJTM45を作り好評化だったのは、このブラインドラックのせいだと言う人もいます。