markdadaoの日記

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最近匂いを感じましたか?

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湯につかり無想するが、邪念に苛まされそそくさと湯船を出る。せっかくの伊香保の湯が、こういう性分だと温浴を楽しめない。

脱衣所を出ると大きな本棚がある。背表紙に目を通すが、あまり興味をそそられるものが無い。両側にはガラスの開き戸がある。暗くて文字が読み取れず、思わず顔を突っ込む。と、そのガラス戸に閉じ込められた古書の匂いが、遠い昔を呼び起こす。

小学生の頃、夏休みは沼津の従兄弟の家へよく遊びに行った。2階には大きなガラスの引き戸の本棚があり、その頃の楽しい日々がよみがえった。匂いは画像や文字にはない、一瞬で全ての情景を再現させる特性がある。

 

嗅覚そのものは腐ったものを見分けることが出来るので、生きる為には必要な機能。しかし日本では香道という芸法があり、その香りを聞く(嗅ぐ)事で、匂いを楽しみ人生に深みを与えてくれる。

芸道には程遠い自分などは、蚊取り線香の匂いで、楽しい夏を想起する。今は無い蚊帳の匂いもしかり。夕立前後の土の湿った匂いもそうである。

また線香の香りはお墓ではなく、趣のある家を訪れた記憶がよみがえる。信心深い家族が、日々仏壇へ手向ける線香の香りで、その家風を作っているのだろう。

臭いといえばジムや混雑した車内の汗臭さは敵わない。夏になると自分も汗の悪臭と加齢臭から周囲を困惑させるだろうと、オードトワレを用意している。しかし、そのポロのRalph Lauren Blueを1,2滴つけるだけでも、その香りが臭いと周囲は言う。どうしたものか?

今の日本人は無臭を良しとし、中和剤なる消臭スプレーが幅をきかせている。国際化が進んでいるこんにち、または海外渡航が増えている中、体臭の強い外国人に臭いに無抵抗な日本人たちが鼻を抑えのたうちまうのではないか?

昔から、映像の未来は「立体画像」と「匂い」言われていた。すでに3Dの立体画像は実現化している。匂いの発生は技術的には追いついているのだろうが、一度出した匂いの回収はどうするのだろう。映画のワンシーンで犯人が中華街の裏通りに逃げ込んだときは、その匂いは堪え難いものがあるだろうし、屋台で売られているドリアンを切り分けているシーンでは館内がドブの臭いで満ち溢れる。

ウクライナのテレビドラマSNIFFER (嗅覚捜査官)は文字通り、嗅覚で事件解決の鍵を嗅ぎ分ける。主人公は犬と同じ臭細胞が人間の100万倍あるかもしれない。犬は特に汗の匂いに敏感だそうで、人間に生まれて感謝する。香水を作る調香師(パフューマー)などの職業もなかなか大変なものだろう。鼻がバカになってしまう。