真空管ギターアンプ用の電源トランス製作の際、真空管のプレート用B電源の電圧設定についてアンプビルダーから相談を受けることがある。
以下がその相談内容です。
質問なのですが、
どちらも聴覚では同じ程度のボリュームにしたとして、電圧を高めに設定した時にボリュームを控えめにした音、電圧を通常に設定してボリュームMAXまで上げた音では、どのような違いがあるのでしょうか?
やはり、電圧を上げた音は良い音なんでしょうか?
真空管への負荷も考えると少し悩んでしまいます。
ちなみに、今までプリ部だけ歪ませた音はあまり好みではありませんでした。
上記の質問に対する、うちのテクニカルアドバイザーの回答を記す。
普通、B電圧が高ければハイが強力になり、逆に低い場合アンプはダークなトーンとなると言われています。ただし、理想のトーンについては、自分の耳で判断されるのが一番でしょう。
それから、ボリュームを絞った状態というのは、当然多くの倍音も逃がしてしまいますので、そのアンプ本来の音ではないという事も認識しておく必要があります。(中にはその音が好みという人がいるかもしれませんが)
実際にB電圧を変えて試してはいかがでしょうか?B巻き線にタップを出して何パターンかの電圧を試すと面白いです。(ただし、真空管のプレート、スクリーングリッドにはそれぞれかけられる最大電圧が決められているので、それを超えない範囲で)また、B電圧を変化させた場合、それにともないバイアスの調整も必要となることもお忘れなく。プレート電流をチェックしながらやってみてください。どの程度のプレート電圧と電流の時、どんなトーンになるのか、実際にやってみると面白いですよ。
それから、真空管全盛期、60年代ムラード等と現行の復刻真空管では全くタフさが違うというのも覚えておいて下さい。現行の球は残念ながら、ひ弱なものが目立ちます。あまり無理は利きませんので。
電源トランスのB巻き線AC電圧を変更する以外の方法として、簡単にB電圧を変えたい場合は次の方法があります。
・整流管を使用したアンプであれば、整流管を変えたり(例えば5U4→5AR4にする)とB電圧はかなり変化します。さらにダイオードに変えると電圧はかなり上がりますが音がタイトになるのが実感できるでしょう。
また、プリアンプ部のみの歪みということですが、それはマスターヴォリューム付きのアンプということでしょうか?もしそうなら、マスターヴォリューム回路には何種類かバリエーションがあるので、それらの回路を試すと良いでしょう。すべてトーンは違ってきます。もちろん、どれもマスター無しの場合と違いますが。マスターボリュームをフルテンにした状態にしておけば、通常のマスターボリューム無しアンプ回路の状態になる方法等は面白いです。