昔からリーダーへ「手柄は部下に、責任は己に」という言葉がある。これはなかなかできないことで、だから訓戒として残っている。
言志四録にこのような言葉がある。
利を他に譲って、害を自分で引き受けるのが「譲」。良いことを人に、悪いことを自分で取るのが「謙」である。
謙の反対で、良い方を自分が取り、悪い方を人に押し付けるのを「驕」といい、譲の反対で利を自分がとり、害を人に与えるのが「争」である。
この驕と争は我が身を亡ぼす始めとなる。戒めとしなければならない。
中国の古典、荘子にも「徳は名に蕩す」とある。
せっかく徳を積んでも、何によってダメになるか。それは名声への憧れ、つまり有名になりたいという気持ちによってである。
したがって、徳を徳ならしめるためには、名が現れぬようにしなければならないのだが、それがまた、なかなか難しいのである。
最近地元の「富岡製糸場」がユネスコ産業遺産になったことで有名になった。それまで20数年間、製糸場を有効活用しようと地元青年会議所会員が自費と寄付と多くの時間を割いて、街の活性化のためにイベントを続けてきた。
それが、ユネスコ遺産に確定してから、あたかも自分が発起であるように振る舞う人たちが跋扈してきた。しかし、長年努力してきた青年会議所のOBや会員たちは、それについて寡黙である。
手柄をひけらかす人達を恥ずかしく思い、青年会議所の会員であったことを誇りに思う。「自処超然」でありたい。