markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

CLAPTON-SPEC (エリック・クラプトン仕様のアンプ)

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「クラプトンが”BEANOアルバム”で使用したマーシャルコンボアンプに搭載されていたアウトプットトランス」について、うちのアンプ技術顧問のAさんの見解を記す。


未だにはっきりとはしないのだが、少なくとも候補としてはRSブランド(イギリスの電子部品販売会社であるラジオスペアーズ社)のDE LUXE、及びトランスメーカーDRAKEによる2機種、計3機種にしぼられる。これはBLUESBREAKERと呼ばれるようになった彼の2台目のマーシャルコンボアンプの購入時期(’65年11月)、画像に残るアンプの外観等から、当時搭載された可能性のあるトランスが限られるからだ。これについては、JOHN WILEY著"THE MARSHALL BLUESBREAKER"及び、PREMIER GUITAR掲載"THE BLUESBREAKER REVISITED"の中でいろいろな角度よりかなり細かく検証がなされている。JOHN氏はBEANOアルバムのクラプトンによるギタートーンに魅せられ続け、自らのリイシューアンプをクラプトンスペックのコンボに改造しているが、そのあたりも具体的に披露しているので我々クラプトンファンにとりなかなか興味深いところだ。

さて候補トランス3機種であるが

まずは”RS DELUXE ”

一次側インピーダンス:6,6k(43%ULタップ有り) 8k  9k とマルチタイプになっている

二次側インピーダンス:4  8  16Ω 


次に"DRAKE"の the block logoタイプと呼ばれるもの

一次側:8k

二次側:4  8  16Ω

 

最後は"DRAKE  784-103"

一次側:8k

二次側:8  16Ω 及び100vラインタップ

 

RS DELUXEについては、マーシャルアンプ・アウトプットトランスの「聖杯」とまで呼ばれているものである。マーシャルアンプ創成期にJTM45に載せるべく採用した、多目的なハイファイ用トランスでRSの常時在庫品。一次側巻き線のタップの多さから、当時のほとんどの出力管の組み合わせに対応できる事がわかる。カタログ上では6.6kにはEL34 ,KT66にマッチ、ととれる表記がある。なので、マーシャルは6.6kタップを使用した可能性が高い。RSは当時ヨーロッパ最大手の電子部品を供給する会社であり、どこかのトランスメーカーにこのアウトプットトランスを製作させていたはずだが、そのメーカーがどこなのかは知られていない。

このトランスは’62~’65年まで採用されていたとの事なので、’65年11月にクラプトンがロンドンのジム・マーシャルの店で買ったコンボアンプに搭載されていた可能性は大いにありそうだ。なぜなら、ヘッドタイプのJTM45に比べ、コンボタイプのブルースブレーカーの方が、当然接続スピーカー・インピーダンスの変更機会は無いはずだ。二次側インピーダンスを換えるにあたり少し複雑な配線換えをしなければならないこのトランスはコンボタイプに優先して載せたのでは?と推察したのだがどうだろう。

また、カタログ記載のスペックによれば、一次巻き線がMAX125mA・DC、二次巻き線が30Wとなっている。これはJTM45の回路(コンボタイプも基本的には同じで、ECC83を1本追加しゲルマニウムトランジスタ1個を加えトレモロ回路を増設しただけ)がフェンダー5F6Aのほぼコピーであり、更に出力管KT66ppのクラスABセッティング(A-A負荷6.6k)等を考えると、トランスにとってはかなりハードな条件となる。ただし、当時アンプは常に最大出力で働かせるものとは考えられていなかったし、設計レイトには必ず安全率が見込まれていたはずなので、実際にトランスが壊れてしまう事故はそう無かったのではと推察される。

DRAKE製の2機種、これ等を載せたアンプも’65年11月には存在しているはずである。そして、こちらの方こそがクラプトンスペックである、とする人が多いのである。(何故かハイパワーというイメージからか?)

実のところ、こちらは一次インピーダンスが8kΩで、6.6kΩのRSと比較すれば、若干出力を稼ぎづらくなる。よくDRAKE製の方がハイパワーと言われ、あたかもそれに載せ換えると出力がアップするがごとくの記述があるが、間違いである。耐圧レイトがRSより大きいというだけのことである。’67年頃からはマーシャルも出力管をEL34を主力とし、その最適負荷を考えアウトプットトランスの一次インピーダンスを3.4kに変更する。その結果、このクラスのアンプ出力を50Wと公表することとなったのだと思う。

クラプトンが所有したそのアンプが現存しない今、トランスに限らずそのアンプの細部仕様を完全に断定することは残念ながら不可能であろう。ましてその伝説のアンプが、各種パーツの混在期に製作されたものであることから、ますます推測も難しいのである。

やはり、JOHN氏のようにアルバムを徹底的に聴き、アンプに手を加えプレイをしながら追求していくしか道がなさそうだ。

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「クラプトンスペック追記」として

’90年に待ち望んだ1962コンボ(ブルースブレーカー)リイシューモデルが、マーシャルより発表されたものの、クラプトンのオリジナル機または当時のものには、残念ながら程遠いものであった。

大きな違いは以下の通り

1.キャビネットのサイズ(幅・奥行き)が小さくなった(グリルクロスも別のタイプに) 

2.回路上では、メインフィルター用、デカップリング用の電解コンデンサの容量の違いや、トレモロ回路の違い(また、当然ながらプリント基板採用にともないCR類も基板用のものが主体となった)

3.出力管がKT66ではなく5881(6L6GC)になった 

4.シャーシーがアルミ製でなくスチール製となった

 5.スピーカーがアルニコからセラミックへ

 

外観上もさることながら、トーンの面でもあまり評価は得られなかったようだ(個人的にもそう思います)

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