以前、落語のまくらの話をした事がある。(下記参照)
最近、立川談志の「まくらコレクション」が本になったので、有無を言わさず購入。
僕と同じように「噺のまくら」が好きな人もいるんだなと。この楽しさを多くの人に知ってもらいたいと思い、何回読んでも面白さが抜けないモノを羅列します。
◆ 毎年落語協会がそろって成田にお参りに行って、その後の余興の話。
中には「無芸」なんて、幕が上がると飯だけ喰ってて、幕がしまっちゃう。過去に一番受けたのが、余興ってんで、落語一席演った奴がいる、「これはようがすね」って言ってたよ、皆。そのときはこれが一番になっちゃった。
◆ 楽屋の貼り紙と言う題で、落語家死亡通知状というのが貼ってあった。して、その内容は?
志ん朝が「脳溢血」。柳朝、「脚気」。円鏡、「交通事故」。圓楽、「肺病」。歌奴が、やはり「脳溢血」でございますかな。中には、好生が、「ふとした病」となっていまして。如何にも、何か、ふとした病で死にそうな感じがします。今度、文蔵になります勢蔵が、「食い過ぎ」。談志はといったら、「他殺」と書いてありまして。
◆ 漁船に乗せてもらい、水上スキーの話が出て大口をたたいた後、「やりますか?」と言われた。座布団より2割方大きい板に太い縄を2本くっつけ、片方を帆柱に巻き付け、海へほっぽり出した。
「掴まれ!」ていうんで板へ掴まっていると浮いてくるんだ。そのうち「縄、放せ!」て。放したら漁船が向こうへ行っちゃうんだ。
気味が悪いもんだね、助けに来てくれるとは思うけど。気が変わって、向こうへ行っちゃうと、それっきりだからね。しばらくすると戻ってきて「もう上がるか?」って言いやがん。「もう上がるかい」と言われれば、こっちは、「もういっぺんやろうじゃねえか」なんてもので。二度目は巧く乗れたけれどね。帰って、身体が痛えのなんの。
◆ 近頃ソビエトが蟹を捕らせてくれない。
だけど、くれなきゃ、蟹がこっちへ来るような事を考えればいい。
おれはやっぱりねえ、そういうのを考えてる。政治家の素質があるんだね。その方法はね、ソビエトの方へ、柿の種を放っちゃうんだな。こっちに、握り飯を、こう置いておくわけなんだな。すっると、蟹が全部こっちへ、・・・・・これで当選するのかね。そういことを日夜考えている。
◆ 「一円」の拾う意味を今昔で語る。
昔の人は「もったいない」という意識があるから、道徳的な意味で拾う。だからね、昔は金を拾うと、「もったいないねえ、こんな所へ天からのお宝を落っことして、ねえ?坊やダメですね。こういう事をしちゃ」と教えた。今はそうじゃないよね。パッと拾うと、子供が「かあちゃん、儲かったね?かあちゃん」とこう言う。
◆ 新幹線のグリーン車におっかあ連中が乗ってきて、うるさいたってねえ。
粋な車掌なら言うだろうね。
「あのう、お静かにお願いします」
「なによ、その静かにしろって!汽車借り切れって、そう言っときな」
「えー、付けていらっしゃいます」
「何を付けてんだい?」
「えー、バッジを付けていらっしゃいます」
「何のバッジをつけてんの?ライオンズクラブかい?」
「えー、ライオンズクラブじゃなくって、菊のバッジが・・・・」
「えっ! ははぁ」
というようになればいいけど、ならねえだろうからね。ならないんだよ。しょうがねえから、「えー、どうぞお賑やかに」なんて言うよりしょうがない。
◆ 相撲の決まり手について、
適わないのを承知で見ている時間というのは、もったいなくてね。だったら「あやまり」ってのを、こしらえたらどうかと思う。コイコイでも手が悪いと、三文で謝っちゃうのがあるでしょ。そういうの、いいと思うけど。
見てる奴は、「大鵬強いねえ、もう今場所、五人、謝らせたからね」
そう言う事を考えてもいいような気がする。
多分、続く。
立川談志 まくらコレクション 談志が語った“ニッポンの業" (竹書房文庫)
- 作者: 立川談志,和田尚久
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2015/01/22
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る