markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

芸術的な製品の出来

トランス製造用の巻線機やコア挿入機、そしてその周辺の治具を作ってくれる人が高崎にいる。年齢は既に80を超えて足も覚束ないが、タバコを吸いながら元気でやっている。

「今夕、治具の制作依頼にお伺いする」と電話をした。

作業場の入り口を入ると、本を読みながら待っていてくれた。すぐに用件を切り出し、見本を見てもらい、同等品の治具制作の依頼をした。話も一段落して、その方は冷蔵庫から2本ドリンクを出してきて、1本を私に差し出し椅子に目を落とす。久しぶりのため、しばらく話をする。

このぐらいの年配の方は、代名詞(それとかあれとか)で同じ話を繰り返すのだが、今日は違った。20歳の頃から父親と機械加工を始め、様々な機械を作ってきたそうだ。秋葉原の朝日無線電気(今のラオックス)に巻線機を卸し、販売をしてもらったそうだ。その頃の日本は「物作り」が経済の牽引車で、作っても作っても間に合わない時代だった。もちろん今の世界の工場と言われる中国や東南アジアは無かったので、日本の大小のメーカーが頑張っていた時代である。ちょうどその頃、私はこの方と会っているのだが、約40年前はこのように親しく話せる間柄ではなかった。

時代はITやサービス産業が台頭し製造業が衰退しているのだが、同じ仕事を60年以上やっている人の製品の出来は芸術的である。いつまでも現役で頑張って欲しい。