markdadaoの日記

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「なぜ、『異論』の出ない組織は間違うのか」を読んで

PHP研究所出版、宇田左近著の「異論を唱える義務」Obligation to dissentという「義務」とは考えが及ばなかった。
JCやRCの会議では異論は権利として唱え、そのくせ会社では異論を唱えられると、真意を受け止めず論陣を張ってしまう。その自分がこの本に巡り会い、目から鱗が落ちた。ポイントを以下に抜き書きします。

1  先輩や上級役職の方に会議中異論を差し挟みづらい。それは組織の歴史や基本的な考え方を充分勉強していないことも要因である。また異論を発言しても周囲からはその発言内容よりも、発言者の資質に焦点が向いてしまう傾向がある。しかし、その組織の活動目標への達成や基盤の充実の為には、おかしいと思う事は堂々と異論を述べ、また、「その異論を聞いた側は何らかの判断、その対応や行動を起こす責任が生じる」というのは「責任回避できない組織環境が創出される」。


2  年次、年齢、組織の合理性を優先する「マインドセット」の転換が、聞く側に回った時、先送りや責任回避が出来なくなり、前例踏襲に陥らない問題解決が可能になると言う。


3  このような行動規範をもった組織は、異論発言は「ファクトベース」(事実主義)が前提。多様な考え方を持った人たちが、価値観、目標・目的を共有化している事。「目的は明示的に共有化されている」が、「考え方は多様」が重要。知的謙虚さといえる共通の価値観を持ち合わせている事。


4  人材の多様性が進まない原因は、マインドセットされている「オジサン」達が多様化の進展を自身でコントロールしたがっているから。形だけの多様化は何も生み出さない。多様な人材が共通な価値観を持ち、異なる意見をぶつけ合い、新しい価値を生み出していく環境の創出により、多様化が進展する。


5  外部からの異論を排除し、内部も異論を自己抑制する同質性の強い、「物を言わぬ」異常な世界が従来の組織にある。従って、「異論を唱える義務」という規範の重要性がある。


6  「単線路線のエリート」たちと「Groupthink」の判断ミスという問題。あえて異論を唱えても、組織に居場所がなくなり、さらに同質性が純化する。従ってマインドセットに起因する組織体質の問題は、警告ととらえるべきではないか。原子力の安全を担う専門家達とその組織は「世界を見る目」を持ち、「世界から見られている事」を理解し、「グローバルに多様な意見が入る仕組み」を設け、「職務として、国民の安全に貢献する事を組織の利益より優先する人材」を育成できれば、組織としての多様性を担保する事も可能になる。


7 「マインドセットの典型」とは、外部からの異論を許容する事もなくまたその内部においても異論を自己抑制する、自らの正しさの思い込み。このように醸成されたマインドセットを「集団思考型マインドセット」と呼ぶ。


8 「集団思考型マインドセット」の特徴の第一は責任回避を図るという姿勢。民間上場企業において、事業計画は経営陣と株主との間の約束だが、「集団思考型マインドセット」では事務型に作成させた事業計画に対し具体策もなければ当事者意識ももたない。また、低めに予測をさせ「下振れリスク」を織り込ませる。民間企業では高い目標をセットさせ抜本的に違うことを考えさせるが、「集団思考型マインドセット」の経営者は高い目標は自分自身のリスク以外に何の意味もない。このようにして出来た「事業計画」はいわば「白書」であって事業を実施するための計画、経営の約束事でもない。