markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

「衣食足りて礼節を知る」と言うが

奉仕活動はロータリークラブの大事なミッションである。多くはクラブ単位で奉仕活動を行う。しかし個人的に行う事もある。その例として、自分の職業を通じて無償の奉仕を積極的に行う。
私の主たる事業はトランスの製造販売であり、その収益はお客様からの仕様に基づき制作したトランスの売価から発生する。しかし、トランスに関わるノウハウや相談事は無償で対応している。1台のトランスに10回以上の相談対応メールのやり取りをする事もある。これは将来のお客様になると、多少そろばんをはじいているかもしれない。
それと比べ、職業とは関係なく一人の人間として他人に親切にする無償の行為には、そろばんが無い。公衆浴場の脱衣所で、足が不便な人がもどかしくズボンを履こうとしていた。周囲を見回し、一人用の藤の椅子を見つけそれをその人の背面に置き「これを使ってください」と言った。不便をしている人を無視は出来ないが、椅子を渡すその行為が恥ずかしくて勇気がいる。混雑した電車の中で椅子を譲るのもとても勇気がいる。自分は認めていないのだが、周りから見ればこっちの風体はじいさんであり、どこかの知らないばあさんに席を譲り「次で降りますから」と言って、知らない駅で降りてしまう。
人に良い事をやっているのだから、堂々としていれば良いのに気が小さいのは困ったもんだ。しかしこのような出来事から人間の再発見が出来る。それは、先ほどの足の悪い人は数の少ない藤の椅子を手に入れる事はとても出来ることではないと諦め、壁にもたれながら一生懸命足を通そうとする。だから運んだ椅子は、私が使っていたのだと勘違いし、何度も申し訳ないと繰り返す。健常者が我先にと椅子を奪い合う様は、この人からしてみれば何と愚かな事に見えたのかもしれない。そしてこの人の謙虚さにハッと気づかされる。
「衣食足りて礼節を知る」とは言うが、この人は不自由な身を社会に甘えるのではなく、社会に迷惑を掛けないようにと心がけているようである。