markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

Marshall Ampのトランスの歴史

日曜日の午後アンプビルダーのA君が来社。弊社がMarshallやFenderのリプレイス用の出力トランスや電源トランスを作っているので、Marshallの歴史をA君が語り始めた。


『アメリカでFenderのBass Manの1959年モデル(真空管は6L6又は5881)の5F6A回路を、イギリスのMarshallがそのコピー品を作ったそれがJTM45。プッシュプル(P-P)で真空管はKT66の45Wであった。この真空管は高くなってきたので、イギリス製のEL34を代用するようになった。アメリカでも1960年代中期以降は6CA7を使用し始める。当時は真空管の全盛期の為出力トランスOPTも多く市場にあり、MarshallはRadio sparesの在庫処分品の30WクラスのOPTを使い、試作品として当時100台程度のアンプを作った。その後はDrake Transformers社のトランスを使うようになる。
マニアには当時のレプリカの伝説のトランスが好評で、在庫処分品かDrake社のトランスをアメリカのMercury社がラインアップして現在はリプレース品として販売している。これらは1次側7,8KΩで2次側は4−8−16Ω仕様。
JTM45は進化して1962というクラプトンが使用したブルースブレイーカーのコンボが発売された。これは1965年物のトレモロ付きで12インチのスピーカーが2本入っている。真空管は同じだが、トランスは何を使用したかは不明。仕様は1次側3.5KΩで2次側は4−8−16Ωの50W.この頃から整流管を止めダイオードに切り替えたため、音が詰まったようなクラッチ音となり、電源回路を強化し出音は大きくなった。因みに従来は整流管1本入っており、約5Vの電圧ドロップするため、信号電流が入ると息継ぐようなコンプレッション効果があった。同じシリーズでも毎年マイナーチェンジをするので音が違い、歪寸前の音を出すようになった。これは真空管に供給するB電圧が500V台と高い電圧の影響もある。
そしてマスターボリュームを付け歪を意図的に出すJCMシリーズの800〜900が出てきた。プリアンプはトランジスタとなり音をひずませているが、その回路がまるでラジカセの安物のようになり、音が痩せてHighが落ちる。これは量産してコストダウンする事が目的で音を犠牲することになった。しかし基板を使わないでハンドワイヤリングにすると高くなり、売れなくなるというジレンマがあった。リプレース用の真空管も売られているが、昔の部品が必要な中国、ロシア、チェコ製の為品質も良くない。
今は当時の生のレコーディング前の音を知る人はいなく、ビンテージのアンプの価値観は、トランスの錆やリード線の亀裂が良い音を出すという迷信が一部ではある。そしてトランスに関しては音の追求ではなく、安くて手に入りやすいものを使っていた歴史が明白となった。』

うちはギタープレーヤーが弾いた音を、忠実にアンプからスピーカーへ伝達するためのトランス作りに工夫を重ねている。だから歴史上のトランスや、現在売られているトランス(特にOPT)と比べ違いが出てくるのは当然のことである。
製品案内 - 変圧器・トランス・フィルムのアテネ電機