markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

トランス業界の行方

トランス業界はバブル崩壊直前における国内生産高から比べ、現在は20%を切っていると想定される。国内生産高の半数は3社(タムラ製作所・TDK・松下グループ)で占められており、残りの半数を2,000社強の中小零細企業で生産をしていると認識している。これに後押しをしているのが、生産拠点の海外シフトである。

トランス業界はユニオンが無い。または、ユニオンが育成される土壌ではない。それは小資本と簡単な設備で事業を起こすことが出来るので、一つの会社が消えてもその社員が数社起業する。そして価格競争の激化により、同業者はすべてライバルとなる。

別の見方をすると、この業界の運命的な経済構造にある。一般的には購入者は販売者よりもアドバンテージがあるのだが、この業界の主な購入品は鉄と銅であり、その供給者は新日鉄やJFE(元川崎製鉄)であり、A団6社と言われる日立電線など大手企業で占められている。また客先は大手家電メーカー、重工業メーカーなどである。
従って、購入材料の値上げに対しクレームをつければ供給をストップされ、客先からは執拗なコストダウンを強いられる。毎年付加価値(人件費)を削り、企業の体力をそり落としているのが現状である。結果として、高給で人を雇うことが出来ないので、人材不足となる。

弊社は、客先数を増やしてイニシアティヴを高めたり、中国ローカル企業と提携しハーフプライスを実現し今日に至るが、未来の展望が開けない。そこで7,8年前よりトランス業界の材料などの情報を共有化することで、仕入先と販売先と業界の地位が対等になるようにITを使い、バーチャル倉庫を提案した。しかし60社ほどの賛同を得たが、稼働できず腰砕けとなった。
今日、業界の材料を小ロットから供給するK社の後継者が来社された。そこで私のアイデアを説明し、息子達の代には協力して、業界の地位を上げることを託した。

それぞれのトランスメーカーが在庫にしている材料の有効利用や、集団でまとめ購入にエントリーさせることで材料費を10%コストダウンできれば、平均材料費率が50%として5%の利益が上乗せできる。この利益を人件費に充当することで、人材が確保できる。また、後継者がいなくて閉鎖する企業の設備や材料を販売したり、その客先の利権をオークションさせることで、リタイアー者に退職金が払える。またワニスやプラスチックの産業廃棄物や、銅、鉄などの廃棄物を業界として入札させることで、費用の低減がはかれる。
現状では絵にかいた餅である。まずは自社がITを活用し、成功しなければ集団はこのようなアイデアに対し、本気で関心を持たないだろう。