markdadaoの日記

真空管アンプ用トランス、スマホ用衝撃吸収フィルム、RC、政治経済、読後感想など

物資の不足

ようやく待ちに待ったガソリンスタンドからタンクローリーが入る知らせがあった。給油のために並ばない事を決めていた私にとって、30リッターを入れる事で一安心。
その安心もつかの間、本業のトランス材料が不足することに直面する。絶縁するワニスが無い。ワニスを供給する工場が被災し、復興するには数カ月かかるとのこと。同業者の紹介により、他の商社を紹介してもらい他メーカーの入手ルートを作る。
次の問題は、銅線の皮膜を作るそのワニスが調達出来ない為、絶縁銅線の入手が出来ない。同様に別ルートを模索中、トランスの注文が入る。これでは生産が出来ず、お客様に迷惑がかかる。
他のメーカーの代理店に連絡を取ると、受付嬢は1週間程度で入荷できるとの事で安堵する。しかし、その商社の営業の方から再度連絡が入り、一切供給が出来ないことを告げられる。既存の客先を優先するため、新規ユーザーには回せないようだ。
東北・関東地域が駄目なので関西のメーカーを当たろうと考え、大阪の知人のトランスメーカーの社長へ連絡。このような時だからと協力的に動いてくれるのだが、商社から出荷規制がかかり調達が出来ないとお詫びの連絡が入る。
中国の銅線はコストが日本と同等で、輸送時間と物流コストがかかりすぎるので諦めた。
関東の同業者は弊社と同様に困っていると思い、当社にはこれだけの不要不急銅線があると近所の同業者へ連絡をした。そして当社の探している銅線の機種名も報告した。そして午前中には、お互いが融通できる銅線の一部を交換できた。
今回の物資の不足を経験し、全てではないが商社の権益を守る非協力的な経営姿勢にはいら立ちを覚える。トランスの同業者は平常時はお互いがライバルであるが、このような緊急時にはお客様の要望に応えると言う共通観念で、材料を一部ではあるが融通し、また情報を交換し合えた。
10年ほど前に私はトランスメーカーのポータルサイトを開設し、組合を作る事が目的ではなく、相互の不要不急材をネット上の仮想倉庫(バーチャル倉庫)にアップし、必要と思われる材料を相互に融通しあう情報交換を提案した。なぜならば、不要不急材が各社に生じるのは、材料メーカー及び商社が採算性を考え最小ロット単位を増やし、購入トランスメーカーが余剰材まで買わされていた。更に商社は自社在庫リスクを避けるため、加工時間がかかる材料のストックを持たない。これらも各企業の在庫となる。これは業界間の力関係による。材料を作るメーカーのほとんどが一部上場企業の大手であり、購入する我々トランスメーカーの9割以上は中小零細である。また、トランスを購入するアッセンブリーユーザーの多くも大手企業である。従ってトランスメーカーは大手企業の谷間におり、発言力は極めて少ない。
トランスメーカーのポータルサイトが有益なのは、不要不急品の情報がネット上にあり、需給者の合理的な融通により、各社のデッドストックを減少させる。試算では材料総額の5%程度となり、これは誰の迷惑もかけず加盟企業が利益を得ることとなる。
3.11を体験した産業界も、部品・材料の調達や流通経路のスキームを変える事になるだろう。